すなわち定聚にいりぬれば
 補処の弥勒におなじくて
 無上覚をさとるなり
28
像法のときの智人も
 自力の諸教をさしおきて
 時機相応の法なれば
 念仏門にぞいりたまう
29
弥陀の尊号となえつつ
 信楽まことにうるひとは
 憶念の心つねにして
 仏恩報ずるおもいあり
30
五濁悪世の有情の
 選択本願信ずれば
 不可称不可説不可思議の
 功徳は行者の身にみてり
31
無碍光仏のみことには
 未来の有情利せんとて
 大勢至菩薩に
 智慧の念仏さずけしむ
32
濁世の有情をあわれみて
 勢至念仏すすめしむ
 信心のひとを摂取して
 浄土に帰入せしめけり
33
釈迦弥陀の慈悲よりぞ
 願作仏心はえしめたる
 信心の智慧にいりてこそ
 仏恩報ずる身とはなれ
34
智慧の念仏うることは
 法蔵願力のなせるなり
 信心の智慧なかりせば
 いかでか涅槃をさとらまし
35
無明長夜の燈炬なり
 智眼くらしとかなしむな
 生死大海の船筏なり
 罪障おもしとなげかざれ
36
願力無窮にましませば
 罪業深重もおもからず
 仏智無辺にましませば
 散乱放逸もすてられず
37
如来の作願をたずぬれば
 苦悩の有情をすてずして
 回向を首としたまいて
 大悲心をば成就せり
38
真実信心の称名は
 弥陀回向の法なれば
 不回向となづけてぞ
 自力の称念きらわるる
39
弥陀智願の広海に