若し菩薩此の身に於て阿惟越致地に至ることを得て阿耨多羅三藐三菩提を成らんと欲はば、當に是の十方諸佛を念ずべし。其の名號を稱すること、『寶月童子所問經』の阿惟越致品の中に説くが如し。「佛寶月に告げたまはく、東方此を去ること無量無邊不可思議恒河沙等の佛土を過ぎて世界有り。無憂と名く。其の地平坦にして七寶もて合成し、紫磨金縷道界に交絡せり。寶樹羅列して以て莊嚴と爲る。地獄・畜生・餓鬼・阿修羅道及び諸の難處有ること無し。清淨にして穢れ無く沙礫・瓦石・山陵・塠阜・深坑・幽壑有ること無し。天常に華を雨らして以て其の地に布けり。時に世に佛有ます、號して善德如來・應供・正徧知・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・佛・世尊と曰ふ。大菩薩衆恭敬し圍遶す。身相の光色大金山を燃やすが如く、大珍寶聚の如し。諸の大衆の爲に正法を演説したまふ。初中後善く辭有り義有り。所説雑へず、具足清淨にして、實の如く失せず。何んが不失と謂ふ。地・水・火・風を失せず、欲界・色界・無色界を失せず、色・受・想・行・識を失せざればなり。寶月、是の佛成佛已來六十億劫を過ぎたまへり。又其の佛の國晝夜異無し、但此の間の閻浮提の日月歳數を以て彼の劫壽を説く。其の佛の光明常に世界を照らしたまふ。一の説法に於て無量無邊千万億阿僧祇の衆生をして無生法忍に住せしめ、此の人數に倍して初忍・第二・第三忍に住することを得しめたまふ。寶月、其の佛の本願力の故に、若し他方の衆生有りて、先佛の所に於て諸の善根を種ゑんに、是の佛但光明を以て身に触れたまふに即ち無生法忍を得ん。寶月、若し善男子・善女人ありて是の佛の名を聞きて能く信受する者は、即ち阿耨多羅三藐三菩提を退せず。餘の九佛の事皆亦是くの如し。今當に諸佛の名號及び