是の妙經典の流布する所處、當に知るべし、其の地は即ち是金剛なり。是の中の諸人亦金剛の如し」と。故に知んぬ、經を聞きて信を生ずる者は皆不可思議の利益を獲るなり。
[第一大門 四、宗旨不同]
第四に次に諸經の宗旨の不同を辨ずとは、若し『涅槃經』に依らば佛性を宗と爲す。若し『維摩經』に依らば不可思議解脱を宗と爲す。若し『般若經』に依らば空慧を宗と爲す。若し『大集經』に依らば陀羅尼を宗と爲す。今此の『觀經』は觀佛三昧を以て宗と爲す。若し所觀を論ぜば依正二報に過ぎず。下に諸觀に依て辨ずる所の如し。若し『觀佛三昧經』(卷一意)に依らば云く。「佛父王に告げたまはく。諸佛の出世に三種の益有り。一には口に十二部經を説き、法施もて利益して能く衆生の無明の暗鄣を除き、智慧の眼を開き諸佛の前に生じて早く無上菩提を得しむ。二には諸佛如來に身相光明無量の妙好有ます。若し衆生有りて稱念し觀察すれば、若しは總相若しは別相、佛身の現在・過去を問ふこと無く、皆能く衆生の四重・五逆を除滅して永く三途に背き、意の所樂に隨ひて常に淨土に生じ、乃至成佛す。三には父の王の勸めて念佛三昧を行ぜしめたまふ。父の王、佛に白さく。佛地の果德眞如實相第一義空、何に因てか弟子をして之を行ぜ遣めざると。佛父王に告げたまはく。諸佛の果德には無量深妙の境界・神通・解脱有ます。是凡夫所行の境界に非ざるが故に、父王を勸めて念佛三昧を行ぜしめたてまつると。父王佛に白さく。念佛の功其の状云何ぞと。佛父王に告げたまはく。伊蘭林の方四十由旬ならんに、一科の牛頭栴檀有り、根芽有りと雖も猶未だ土を出でず、其の伊蘭林唯臭くして香ばしきこと無し、若し其の花菓を噉すること有らば狂を發して死せん。後の時に栴檀の根芽漸漸く生長して纔に樹に成らんと欲す、香氣昌盛にして遂に能く此の林を改變して普く皆香美ならしむ。