聲聞衆を解し竟んぬ。 次に菩薩衆を解す。此の衆の中に就て即ち其の七有り。一には相を標す、二には數を標す、三には位を標す、四には果を標す、五には德を標す、六には別して文殊の高德の位を顯す、七には總じて結す。又此等の菩薩、無量の行願を具し、一切の功德の法に安住す。十方に遊歩して權方便を行じ、佛の法藏に入りて彼岸を究竟し、無量の世界に於て、化して等覺を成ず。光明顯曜にして普く十方を照らし、無量の佛土六種に震動す。縁に隨ひて開示して、即ち法輪を轉ず。法鼓を扣き法劒を執り、法雷を震ひ、法雨を雨らす。法施を演べ、常に法音を以て諸の世間を覺せしむ。邪網を掴裂し諸見を消滅し、諸の塵勞を散じ諸の欲塹を壞る。淸白を顯明して佛法を光融し、正化を宣流す。衆生を愍傷すること未だ曾て慢恣せず。平等の法を得て無量百千の三昧を具足す。一念の頃に於て、周徧せずといふこと無し。羣生を荷負して之を愛すること子の如し。一切の善本皆彼岸に度す、悉く諸佛の無量の功德を獲て、智慧開朗なること思議すべからず。七句の不同有りと雖も、菩薩衆を解し訖んぬ。
上來二衆の不同有りと雖も、廣く化前序を明し竟んぬ。
[禁父縁]
二に禁父の縁の中に就て即ち其の七有り。
一に「爾時王舍大城」より以下は、總じて起化の處を明す。此れ往古の百姓、但城中に舍を造るに、即ち天火の爲に燒かる。若し是王家の舍宅には悉く火近づくこと無し。後時に百姓共に王に奏す。臣等宅を造れば數々天火の爲に燒かる、但是王舍のみ悉く火近づくこと無し。何の所以有りといふを知らずと。王奏人に告げていはく。今より以後卿等宅を造らん時は、但我今王の爲に舍を造ると言へと。奏人等各々王の敕を奉けて、歸還して舍を造るに、更に燒かれず。此に因て相傳して故らに「王舍」と名くることを明す。 「大城」と言ふは、此の城極めて大にして、居民九億なり。故に「王舍大城」と噵ふなり。