一び口より出でて已後、終に口に還り入らずして、自然に壞爛せん。此れ亦是證生增上縁なり。

又敬ひて白す。一切の往生人等、若しこの語を聞かば、即ち聲に應じて悲しみて涙を雨らし、連劫累劫身を粉にし骨を碎きて、佛恩の由來を報謝して、本心に稱すべし。豈に敢て更に毛髮も之に憚る心有らんや。又白す。諸の行人等、一切罪惡の凡夫、尚罪滅を蒙り得生すと證攝す。何に況や聖人、生ぜんことを願じて去くことを得ざらんや。 上來總じて前の問に何等の衆生を攝して淨土に生ずることを得るやといふに答ふ。五種の增上縁の義竟んぬ。

[結勸修行分]
問て曰く。釋迦出現して、五濁の凡夫を度せんが爲に、即ち慈悲を以て、十惡の因三塗の苦を報果することを開示し、又平等の智慧を以て、人天廻して彌陀佛國に生ずることを悟入せしむ。諸經に頓敎の文義歴然なり。今乃ち人有りて公然として信ぜず、共に相誹毀する者、未だ知らず、此の人現生及び死後、何なる罪報を得るや。具に佛經を引きて其れが與に證を作して、改悔を生じ佛大乘を信じ廻して淨土に生ぜしめて、即ち利益を爲せ。答て曰く。佛經に依て答ふれば、又此の惡人は上の五惡性分の中に已に説き竟るが如し。今直に佛經を引き以て明證と爲ん。即ち『十往生經』(意)に云ふが如し。「佛山海慧菩薩に告げたまはく。汝今一切衆生を度せんが爲に、當に是經を受持すべし。佛又山海慧に告げたまはく。是の經を名けて觀阿彌陀佛色身正念解脱三昧經と爲す。亦度諸有流生死八難有縁衆生經と名く。是の如く受持の衆生、未だ念佛三昧の縁有らず、是の經能く與に大三昧門を開することを作す。是の經能く衆生の與に地獄の門を閉づ。是の經能く衆生の與に、害人を除き惡鬼を殄滅し。四向悉く皆安穩ならしむ。佛山海慧に告げたまはく、我が所説の如くば、其の義是の如し。山海慧佛に白して言さく。