之に就て二有り。一は大乘、二は小乘なり。大乘の中に就て、顯密・權實等の不同有りと雖も、今此の集の意は、唯顯大及以び權大を存す。故に歴劫迂廻の行に當れり。之に准じて之を思ふに、應に密大及以び實大を存すべし。然れば則ち今眞言・佛心・天台・華嚴・三論・法相・地論・攝論、此等の八家の意、正しく此に在りとなり、應に知るべし。次に小乘といふは、總じて是小乘の經律論の中に明す所の聲聞・縁覺の斷惑證理、入聖得果の道なり。上に準へて之を思ふに、亦倶舍・成實、諸部の律宗を攝すべきのみ。凡そ此の聖道門の大意は、大乘及以び小乘を論ぜず。此の娑婆世界の中に於て、四乘の道を修して四乘の果を得。四乘といふは、三乘の外に佛乘を加ふるなり。 次に往生淨土門といふは、此に就て二有り。一には正しく往生淨土を明すの敎、二には傍に往生淨土を明すの敎なり。 初めに正しく往生淨土を明かすの敎といふは、三經一論是なり。三經といふは、一には『無量壽經』、二には『觀無量壽經』、三には『阿彌陀經』なり。一論といふは、天親の『往生論』是なり。或いは此の三經を指して、淨土の三部經と號すなり。 問て曰く。三部經の名、亦其の例有りや。答て曰く。三部經の名、其の例一に非ず。一には法華の三部、謂ゆる『無量義經』・『法華經』・『普賢觀經』是なり。二には大日の三部、謂ゆる『大日經』・『金剛頂經』・『蘇悉地經』是なり。三には鎭護國家の三部、謂ゆる『法華經』・『仁王經』・『金光明經』是なり。四には彌勒の三部、謂ゆる『上生經』・『下生經』・『成佛經』是なり。今は唯是彌陀の三部なり。故に淨土の三部經と名づくるなり。彌陀の三部といふは、