焚焼するがごとし。人、能く中にして心を一つにして意を制し身を端しくし行を正しくして、独りもろもろの善を作りて衆悪を為らざれば、身独り度脱して、その福徳、度世・上天・泥洹の道を獲ん。これを一つの大善とするなり。」



仏の言わく、「その二つの悪というは、世間の人民、父子・兄弟・室家・夫婦、すべて義理なくして法度に順ぜず。奢婬 憍縦しておのおの意を快くせんと欲えり。心に任せて自ら恣にかわるがわる相欺惑す。心口おのおの異に、言念実なし。佞諂不忠にして巧言諛媚なり。賢を嫉み善を謗りて怨枉に陥し入る。主上、明らかならずして臣下を任用す。臣下、自在にして機偽端多し。度を践みて能く行いてその形勢を知る。位にありて正しからざれば、それがために欺かる。妄りに忠良を損じて天の心に当たらず。臣はその君を欺き、子はその父を欺く。兄弟・夫婦・中外知識、かわるがわる相欺誑す。おのおの貪欲・瞋恚・愚痴を懐きて自ら己を厚くせんと欲えり。多くあることを欲貪す。尊卑上下、心倶に同じく然なり。家を破り身を亡じて前後を顧みず。親属・内外これに坐して滅ぶ。