浄土文類聚鈔
愚禿釈親鸞集
それ、無碍難思の光耀は苦を滅し楽を証す。万行円備の嘉号は障を消し疑いを除く。末代の教行、専らこれを修すべし。濁世の目足、必ずこれを勤むべし。しかれば最勝の弘誓を受行して、穢を捨て浄を欣え。如来の教勅を奉持して、恩を報じ徳を謝せよ。ここに片州の愚禿、印度西蕃の論説に帰し、華漢・日域の師釈を仰いで、真宗の教行証を敬信す。特に知りぬ、仏恩窮尽し叵ければ、明らかに浄土の文類聚を用いるなり。
しかるに、「教」と言うは、すなわち『大無量寿経』なり。この経の大意は、弥陀、誓いを超発して広く法蔵を開いて、凡小を哀れみて選びて功徳の宝を施することを致す。釈迦、世に出興して道教を光闡して、群萠を拯い恵むに真実の利をもってせ
夫無碍難思光耀滅苦証楽。万行円備嘉号消障除疑。末代教行、専応修此。濁世目足、必可勤斯。爾者受行最勝弘誓而、捨穢忻浄。奉持如来教勅而、報恩謝徳。爰片州愚禿、帰印度西蕃論説、仰華漢日域師釈、敬信真宗教行証。特知、仏恩叵窮尽、明用浄土文類聚矣。
然言教者則大無量寿経也。斯経大意者、弥陀、超発於誓広開法蔵、致哀凡小選施功徳之宝。釈迦、出興於世光闡道教、欲拯群萌恵以真実之利。