上皇群臣尊敬し
京夷庶民欽仰す
10
承久の太上法皇は
本師源空を帰敬しき
釈門儒林みなともに
ひとしく真宗に悟入せり
11
諸仏方便ときいたり
源空ひじりとしめしつつ
無上の信心おしえてぞ
涅槃のかどをばひらきける
12
真の知識にあうことは
かたきがなかになおかたし
流転輪回のきわなきは
疑情のさわりにしくぞなき
13
源空光明はなたしめ
門徒につねにみせしめき
賢哲愚夫もえらばれず
豪貴鄙賎もへだてなし
14
命終その期ちかづきて
本師源空のたまわく
往生みたびになりぬるに
このたびことにとげやすし
15
源空みずからのたまわく
霊山会上にありしとき
声聞僧にまじわりて
頭陀を行じて化度せしむ
16
粟散片州に誕生して
念仏宗をひろめしむ
衆生化度のためにとて
この土にたびたびきたらしむ
17
阿弥陀如来化してこそ
本師源空としめしけれ
化縁すでにつきぬれば
浄土にかえりたまいにき
18
本師源空のおわりには
光明紫雲のごとくなり
音楽哀婉雅亮にて
異香みぎりに暎芳す
19
道俗男女預参し
卿上雲客群集す
頭北面西右脇にて
如来涅槃の儀をまもる
20
本師源空命終時
建暦第二壬申歳
初春下旬第五日
浄土に還帰せしめけり
已上源空聖人
已上七高僧和讃 一百十七首