觀經正宗分散善義 卷第四

沙門善導集記
[總説]
此より已下は、次に三輩散善一門の義を解す。此の義の中に就て即ち其の二有り。一には三福を明して以て正因と爲す。二には九品を明して以て正行と爲す。今三福と言ふは、第一の福は、即ち是世俗の善根なり。曾來未だ佛法を聞かず、但自ら孝養・仁・義・禮・智・信を行ず。故に世俗の善と名く。第二の福は、此を戒善と名く。此の戒の中に就て、即ち人・天・聲聞・菩薩等の戒有り。其の中に或は具受・不具受有り、或は具持・不具持有り。但能く廻向すれば、盡く往生を得。第三の福をば、名けて行善と爲す。此は是大乘の心を發せる凡夫、自ら能く行を行じ、兼ねて有縁を勸めて、惡を捨て心を持たしめて、廻して淨土に生ず。又此の三福の中に就て、或は一人單に世福を行じて廻して亦生を得る有り、或は一人單に戒福を行じて廻して亦生を得る有り、或は一人單に行福を行じて廻して亦生を得る有り。或は一人上の二福を行じて廻して亦生を得る有り、或は一人下の二福を行じて廻して亦生を得る有り、或は一人具に三福を行じて廻して亦生を得る有り。或は人等有りて、三福倶に行ぜざる者をば、即ち十惡・邪見・闡提の人と名く。
九品と言ふは、文に至りて當に辨ずべし。應に知るべし。
今略して三福差別の義意を料簡し竟んぬ。