身を
ちて上り走りて上隔の中に到り、手に刀輪を攀ぢんとす。時に虚空の中に熱鐵丸を雨らす。東門に走り趣きて既に門閫に至れば、獄率・羅刹手に鐵叉を捉りて逆に其の眼を刺し、鐵狗心を齧む。悶絶して死す、死し已りて復生ず。南門を見れば開けたり。前の如くして異ならず。是の如くして西門・北門も亦皆此の如し。此の如きの時間半劫を經歴す。阿鼻獄に死して寒冰の中に生じ、寒冰獄に死して黑闇處に生ず。八千万歳目に見る所無し。大蛇の身を受けて婉轉腹行し、諸情闇塞にして解知する所无し。百千の孤狼牽掣して之を食ふ。命終の後に畜生の中に生じて、五千万身鳥獸の形を受く。還人中に生じて、聾盲瘖瘂・疥癩癰疽・貧窮下賎にして一切の諸衰を以て嚴飾と爲す。此の賎身を受けて五百身を經、後に還餓鬼の中に生ずることを得。是の如き等の輪廻三惡無量無邊なり」と。弟子衆等、今地獄を聞きて心驚き毛豎つ、怖懼無量なり。恐畏らくは殘殃盡きずして復還流浪せん。今生より已來三業を縱暴にして衆の重罪を造る。若し懺悔せずば、定んで此の苦を招きて出づる期有ること無けん。今三寶、道場の大衆の前に對して、發露懺悔す、即ち安樂なり。知りて敢へて覆藏せず。唯願はくは十方の三寶、法界の衆生、大慈悲廣大慈悲を發して、我が惡の艸の地に覆へるが如くなるを計らずして、布施歡喜し我が懺悔を受け我が淸淨を憶したまへ。唯願はくは慈悲を捨てずして我等を攝護し已作の罪は願はくは除滅し、未起の罪は願はくは生ぜしめず、已作の善は願はくは增長し、未作の善は方便して生ぜしめたまへ。願はくは今日より乃至不起忍已來、誓ひて衆生と共に邪を捨てて正に歸し、菩提心を發して慈心もて相向かひ、佛眼もて相看ん。菩提の眷屬、眞の善知識として、同じく淨土に生じ、乃至成佛せん。是の如き等の罪、永く相續を斷じて更に敢て覆藏せざらん。發願し已りて至心に阿彌陀佛に歸命したてまつる。