顕浄土真実信文類序

愚禿釈親鸞集
 1それ以みれば、信楽を獲得することは、如来選択の願心より発起す、真心を開闡することは、大聖矜哀の善巧より顕彰せり。
 2しかるに末代の道俗・近世の宗師、自性唯心に沈みて浄土の真証を貶す、定散の自心に迷いて金剛の真信に昏し。3ここに愚禿釈の親鸞、諸仏如来の真説に信順して、論家・釈家の宗義を披閲す。広く三経の光沢を蒙りて、特に一心の華文を開く。しばらく疑問を至してついに明証を出だす。誠に仏恩の深重なるを念じて、人倫の哢言を恥じず。4浄邦を欣う徒衆、穢域を厭う庶類、取捨を加うといえども、疑謗を生ずることなかれ、と。
夫以獲得信楽発起自如来選択願心。開闡真心顕彰従大聖矜哀善巧。然末代道俗、近世宗師、沈自性唯心貶浄土真証、迷定散自心昏金剛真信。爰愚禿釈親鸞、信順諸仏如来真説、披閲論家釈家宗義。広蒙三経光沢、特開一心華文。且至疑問遂出明証。誠念仏恩深重不恥人倫哢言。欣浄邦徒衆、厭穢域庶類、雖加取捨、莫生毀謗矣。
至心信楽の願  正定聚の機