顕浄土真実信文類三

愚禿釈親鸞集
 1謹んで往相の回向を案ずるに、大信有り。
 2大信心はすなわちこれ、長生不死の神方、欣浄厭穢の妙術、選択回向の直心、利他深広の信楽、金剛不壊の真心、易往無人の浄信、心光摂護の一心、希有最勝の大信、世間難信の捷径、証大涅槃の真因、極速円融の白道、真如一実の信海なり。
 3この心すなわちこれ念仏往生の願より出でたり。この大願を選択本願と名づく。また本願三心の願と名づく。また至心信楽の願と名づく。また往相信心の願と名づくべきなり。
 4しかるに常没の凡愚・流転の群生、無上妙果の成じがたきにあらず、真実の信楽実に獲ること難し。何をもってのゆえに。いまし如来の加威力に由るがゆえなり。博く大悲広慧の力に因るがゆえなり。
謹案往相回向有大信。大信心者則是長生不死之神方、欣浄厭穢之妙術、選択回向之直心、利他深広之信楽、金剛不壊之真心、易往無人之浄信、心光摂護之一心、希有最勝之大信、世間難信之捷径、証大涅槃之真因、極速円融之白道、真如一実之信海也。斯心即是出於念仏往生之願。斯大願名選択本願。亦名本願三心之願、復名至心信楽之願。亦可名往相信心之願也。然常没凡愚、流転群生、無上妙果不難成、真実信楽実難獲。何以故、乃由如来加威力故。