「速得成就阿耨多羅三藐三菩提」と言たまふや。答曰。『論』に言はく。五門の行を修して、自利利他成就するを以ての故なり。然に覈に其の本を求るに阿彌陀如來を增上縁と爲す。他利と利他と談ずるに左右有り。若し自から佛をして言はば宜く利他と言ふべし、自から衆生をして言はば宣く他利と言ふべし。今将に佛力を談ぜんとす、是の故に利他を以て之を言ふ。當に此の意を知るべし。凡そ是れ彼の淨土に生と及び彼の菩薩人天の所起の諸行は皆阿彌陀如來の本願力に縁るが故なり。何を以て之を言ふとなれば、若し佛力に非ずば四十八願便ち是れ徒設ならむ。今的しく三願を取て用て義の意を證せむ。願に言たまはく。「設ひ我れ佛を得むに、十方の衆生、心を至し信樂して我が國に生と欲ふて乃至十念せむ、若し生を得ずば、正覺を取らじ。唯五逆と誹謗正法とを除く」と。佛願力に縁るが故に十念す、念佛すれば便ち往生を得む。往生を得るが故に即ち三界輪轉の事を勉かる。輪轉なきが故に所故に速を得ること一の證なり。願に言たまはく。「設ひ我れ佛を得むに、國の中の人天、正定聚に住して必ず滅度に至らずば、正覺を取らじ」と。佛願力に縁るが故に正定聚に住す、正定聚に住するが故に必ず滅度に至て諸の廻伏の難无し。故に速やかなることを得る二の證なり。願に言たまはく。「設ひ我れ佛を得んに、他方佛土の諸の菩薩衆我が國に來生して究竟して必ず一生補處に至らむ、其の本願の自在に化する所ありて衆生の爲の故に弘誓の鎧を被て德本を積累し、一切を度脱して諸佛の國に遊て菩薩の行を修し十方の諸佛如來を供養し、恒沙无量の衆生を開化して无上正眞の道を立せしめんをば除く。常倫に超出し諸地の行現前し、普賢の德を修習せむ、若し爾ずば正覺を取らじ」と。佛願力に縁るが故に、常倫に超出し諸地の行現前し、普賢の德を修習せむ。常倫に超出し、諸地の行を以ての故に、所以に速を得る三の證なり。斯を以て他力を推するに增上縁と爲す、