[第八大門]
第八大門の中に三番の料簡有り。第一に略して諸經を擧げて來證して勸めて此を捨てて彼を忻はしむ。第二に彌陀・釋迦二佛比挍す。第三に往生の意を釋す。
[第八大門 一、經論勸説]
第一に略して諸の大乘經を擧げて來證して皆勸めて此を捨てて彼を悕はしむとは、一には謂く耆闍崛山の説、『大經』二卷。二には『觀經』一部、王宮・耆闍兩會の正説なり。三には『小卷無量壽經』舍衞の一説。四には復『十方隨願往生經』の明證有り。五には復『無量淸淨覺經』二卷一會の正説有り。六には更に『十往生經』一卷有り。諸餘の大乘經論にも指讚する處多し。『請觀音』・『大品經』等の如し。又龍樹・天親等の論の如き、歎勸一に非ず。餘方の淨土は皆此の如く丁寧ならず。
[第八大門 二、二尊比挍]
第二に彌陀・釋迦二佛を比挍すとは、謂く此の佛釋迦如來八十年世に住まりて暫く現じて即ち去りたまひ、去りて返りたまはず。忉利の諸天に比するに一日にも至らず。又釋迦の在時救縁亦弱し。毗舍離國の人の現患を救ひし等の如きなり。何となれば、時に毗舍離國の人民五種の惡病に遭へり。一には眼赤きこと血の如し、二には兩の耳より膿を出す、三には鼻の中より血を流す、四には舌噤みて聲無し、五には食ふ所の物化して麤澀と爲る。六識閉塞せること猶し醉人の如し。五夜叉有り、或は訖拏迦羅と名く、面の黑きこと墨の如し、而も五眼有り、狗牙上に出で、人の精氣を吸ふ。良醫耆婆其の道術を盡くすも救ふこと能はざる所なり。時に月盇長者有り、首と爲りて病人を部領し皆來りて佛に歸して頭を叩きて哀を求めしむ。爾の時世尊、無量の悲愍を起して病人に告げて曰く。西方に阿彌陀佛・觀世音・大勢至菩薩有す。汝等一心に合掌して見たてまつらんことを求めよと。