即ち舍利弗の所に向ひて、身通を學ばんことを求む。尊者語りて言く。人者且く四念處を學せよ、身通を學すべからずと。既に請へども心を遂げず、更に餘の尊者の邊に向ひて求む。乃至五百の弟子等、悉く人として敎ふるもの無し、皆四念處を學ばしむ。請ふこと已ぐることを得ずして遂に阿難の邊に向ひて學ぶ。阿難に語りて言く。汝は是我が弟なり。我通を學ばんと欲す。一一次第に我に敎へよと。然るに阿難初果を得たりと雖も、未だ他心を證せず、阿兄の私密に通を學びて、佛所にして惡計を起さんと欲するを知らず。阿難遂に即ち喚びて靜處に向ひて、次第に之を敎ふ。跏趺正坐せしめて、先づ心を將て身を擧げ似動の想をなさしむ。地を去ること一分・一寸と想へ。一尺・一丈と想へ。舍に至るに空無礙の想を作せ。直に過ぎて空中に上ると想へ。還心を攝して下りて本の坐處に至ると想へ。次に身を將て心を擧げしむ。初の時に地を去ること一分・一寸等、亦前の法の如く身を以て心を擧げ、心を以て身を擧げしむ。亦隨ひて既に上空に至り已らば、還身を攝取して下りて本の坐處に至れ。次に身心合して擧ぐと想へ。還前の法に同じく、一分・一寸等、周りて復始めよ。次に身心一切の質礙の色境の中に入るに、不質礙の想を作すと想へ。次に一切の山・河・大地等の色自身の中に入るに、空の如く無礙にして色相を見ずと想へ。次に自身或は大にして虚空に徧滿し、坐臥自在なり、或は坐し或は臥して手を以て日月を捉り動かすと想へ。或は小身と作りて微塵の中に入るに、一切皆無礙の想を作せと。阿難是の如く次第に敎へ已んぬ。時に調達既に法を受得し已りて、即ち別して靜處に向ひて、七日七夜一心專注して、即ち身通を得、一切の自在、皆成就することを得たり。既に通を得已りて、即ち太子の殿の前に向ひて、空中に在りて大神變を現ず。身上より火を出し、身下より水を出す。或は左邊に水を出し、右邊に火を出す。或は大身を現じ、或は小身を現ず。或は空中に坐臥し、意に隨ひて自在なり。太子見已りて左右に問て曰く。