乃ち我が意を承けずと。王更に使者に敕す。卿往いて重ねて請へ。請ひて若し得ざれば、當に即ち之を殺すべし。既に命終し已りなば我が與に子と作らざるべけんやと。使人敕を受けて仙人の所に至りて、具に王の意を噵ふ。仙人使の説を聞くと雖も、意に亦受けず。使人敕を奉して即ち之を殺さんと欲す。仙人曰く。卿當に王に語るべし。我が命未だ盡ず、王心口を以て人をして我を殺さしむ。我若し王の與に兒と作らば、還心口を以て人をして王を殺さしめんと。仙人此の語を噵ひ已りて即ち死を受く。既に死し已りて即ち王宮に託して生を受く。其日の夜に當りて、夫人即ち有身を覺ゆ。王聞きて歡喜し天明に即ち相師を喚びて以て夫人を觀しむ。是男なりや是女なりやと。相師觀已りて王に報へて言く。是兒女に非ず。此の兒王に於て損有るべしと。王曰く。我が國土皆之に捨屬すべし、縱ひ所損有りとも吾亦畏無しと。王此の語を聞きて憂喜交々懷く。王夫人に白して言く。吾夫人と共に私かに自ら平章せん。相師兒吾に於て損有るべしと噵ふ、夫人、生まるる日を待ちて、高樓の上に在りて、天井の中に當りて之を生みて人をして承接せしむること勿れ。落ちて地に在らんに豈死せざるべけんや。吾亦憂ふること無く、聲も亦露れざらんと。夫人即ち王の計を可とし、其の生む時に及びて一ら前の法の如くす。生み已りて地に墮つるに、命便ち斷えず、唯手の小指を損ず。因て即ち外人同じく唱へて折指太子と言ふ。未生怨と言ふは、此れ提婆達多惡妬の心を起すに因るが故に、彼の太子に對して昔日の惡縁を顯發す。云何が妬心して惡縁を起す。提婆は惡性にして、人と爲り匈猛なり。復出家すと雖も、恒常に佛の名聞利養を妬む。然るに父の王は是佛の檀越なり。一時の中に於て多く供養を將て如來に奉上す。謂く金・銀・七寶・名衣・上服・百味の菓食等、一一色色皆五百車、香・華・伎樂、百千万の衆讚歎し圍遶して、佛會に送り向ひて佛及び僧に施す。時に調達見已りて妬心更に盛なり。