二には邪を捨てて正を行ずる善人なり。三には虚を捨てて實を行ずる善人なり。四には非を捨てて是を行ずる善人なり。五には僞を捨てて眞を行ずる善人なり。此の五種の人、若し能く佛に歸すれば即ち能く自利利他す。家に在りては孝を行じ、外に在りては亦他人を利す、望に在りては信を行じ、朝に在りては君子と名けられ、君に事へては能く忠節を盡す。故に自性の善人と名くるなり。惡性の人と言ふは、一には即ち眞を謗じて僞を行ずる惡人なり。二には正を謗じて邪を行ずる惡人なり。三には是を謗じて非を行ずる惡人なり。四には實を謗じて虚を行ずる惡人なり。五には善を謗じて惡を行ずる惡人なり。又此の五種の人、若し願じて佛に歸せんと欲するも、自利に能はず、亦他人を利せず。又家に在りて孝せず、望に在りて信無く、朝に在りて小兒と名けられ、君に事へては則ち常に謟佞を懷く、之を不忠と謂ふ。又此の人等、他の賢德善人の身の上に於て、唯能く是を敗り非を成じ、但他の惡を見る。故に自性の惡人と名くるなり。又上諸佛賢聖に至るまで、人天六道一切の良善、此等の惡人をば譏りて耻辱する所なり、諸の有智の者應に知るべし。今一一に具に善惡二性の人を引く、道理顯然なり。上の問を答へ竟んぬ。

又下に『經』(觀經意)に云く。「佛韋提に告げたまはく。汝及び衆生、心を專にし念を一處に計して、西方の地下の金幢、地上の衆寶莊嚴を想ふべし」と。下十三觀に至る已来は、總じて上の韋提の二請に答へ、以て明證と爲す。善惡の凡夫、廻心し起行して、盡く往生を得しめんと欲す。此れ亦是證生增上縁なり。

又下に『經』(觀經意)に云ふが如し。「衆寶國土に、五百億の寶樓有り、其の樓閣の中に、無量の天人有りて、天の伎樂を作す、此の衆音の中に、皆念佛法僧を説く、此の想成じ已りぬれば、命終らんと欲する時、定んで彼の國に生ず」と。又此の經を以て證す。亦是證生增上縁なり。