獨り衆善を作して、衆惡を爲さざれば、身獨り度脱して其の福徳を得、長壽・度世・上天・泥洹の道を得べし。是を三の大善と爲す。
佛言はく。其の四惡とは、諸の惡人善を作すこと能はず、自ら相壞敗し、轉た相敎令して共に衆惡を作り、主として傳言を爲し、但兩舌・惡口・罵詈・妄語を欲し、相嫉みて更相に鬪亂す。善人を憎嫉し、賢善を敗壞して、傍に於て惡を快ぶ。復父母に孝順し供養せず、師父・知識を輕易して信無く誠實を得難く、自ら尊貴にして道有りと言ひて、横に威武を行じて、捲力勢えお加へ、侵剋して人を易(あなど)り、自ら知ること能はず、惡を爲すも自ら羞慚すること無く、自ら頗健なるを用て人をして承事し敬畏せしむ。復天地・神明・日月を敬畏せず、亦敎へて善を作さしむべからず、降化すべからず、自ら用て偃蹇として、常に當に爾るべしと謂へり。亦復憂哀の心無く、亦恐懼を知らずして、恣意憍慢なること是の如し。天神記識す。其の前世宿命に頼りて頗る福徳を作すに、小善扶接し、營護して之を助く。今世に惡を作り、福徳盡儩し、諸善鬼神各々去りて之を離れ、身獨り空しく立して復依る所無く、重き殃讁を受けて、壽命終るとき身の惡繞り歸して自然に迫促す。當に往いて追逐して止息することを得ざるべし。自然の衆惡共に趣き乏に頓(いた)る、其れ名籍神明の所に在ること有り、殃咎引牽して、當に値ひ相得べし、當に往いて趣向すべし。過の讁罰を受け、身心摧碎し、神形の苦極まりて、離却することを得ず。但前み行いて火鑊に入ることを得。是の時に當りて悔ゆとも復何の益かあらん、當に復何ぞ及ぶべし。天道自然にして、蹉跌することを得ず。故に泥犁・禽獸・薜荔・蜎飛・蠕動の屬有り。其の中に展轉して、世世累劫にも出づる期有ること無く、解脱を得難し。痛言ふべからず。是を四の大惡・四の痛・四の燒と爲す。勤苦是の如し。比へば火の起りて人の身を燒くが如し。人能く其の中に於て、心を一にし意を制し、身を端しくし行を正しくして、獨り衆善を作して衆惡を爲さざれば、身獨り度脱して其の福徳を得、長壽・度世・上天・泥洹の道を得べし。是を四の大善と爲す。
佛言はく。其の五とは、世人徙倚懈惰にして肯て善を作さず、生を治せんことを念はず、妻子飢寒し、父母倶に然なり。呵して其の子を敎へんと欲すれば、其の子惡心にして、目を瞋らして譍(ことば)怒り、言令に和せず、違戻反逆して野人よりも劇し、比へば怨家の若し、子無きに如かず。妄に遍く假貸し、衆共に患へ厭ふ。尤も返復すること無く