此の四句は莊嚴水功德成就と名く。佛本と何が故ぞ此の願を起したまふと。有る國土を見そなはすに、或は澐溺
江の水の大きなる波之を澐溺と謂ふ亡音 洪濤
海の波の上がる大窂反 して滓沫人を驚かす、或は凝凘
氷を流す上支反 淶
古甲反 凍相着大甲反 して、蹙
迫る子六反 架か壤え
常を失すなり他則反 す。向ふに安悅の情无し、背くに恐値の慮り有り。菩薩此れを見そなはすに大悲心を興したまへり。願は我れ成佛せむに、所有の流・泉・池・沼 池之小反 宮殿と相ひ稱ふて
事出經中 種種の寶花布きて水の餝りと為む、微風やうやく扇ぎて映發するに序有て神を開き躰を悅ばしめて一も不可なること无からんと。是の故に「寶華千万種彌覆池流泉微風動華葉交錯光亂轉」と言たまへり。
宮殿諸樓閣 觀十方无碍 雜樹異光色 寶欄遍圍繞
此の四句は莊嚴地功德成就と名く。佛本と何が故ぞ此の莊嚴を起したまふや。有る國土を見そなはすに、嶕
高皃才消反 嶢
牛消反 峻
高俊音 嶺にして枯木岑に橫たへ、岝
山不齊才白反 峉
岝峉五百反 峌
深山谷亦山消皃形音 嶙
深无崖力人反 にして莦
惡卉皃消音 茅
道多卉不可行方交反 壡に盈てり。茫茫たる蒼海絶目の川たり、葻葻たる廣澤无蹤の所たり。菩薩此れを見なはして大悲の願を興したまへり。願は我國土は地平かにして掌の如く、宮殿・樓閣鏡のごとくして十方を納めむに、的しくして屬く所无く亦屬せざるに非らむ。寶樹寶欄互に映餝を爲さむ。是の故に「宮殿諸樓閣觀十方无碍雜樹異光色寶欄遍圍繞」と言たまへり。