是の故に無染淸淨心は是菩提に順ずる門なり。二には安淸淨心。一切衆生の苦を拔かんが爲の故に。菩提は一切衆生を安穩にする淸淨の處なり。若し心を作して一切衆生を拔きて生死の苦を離れしめずば即便ち菩提に違す。是の故に一切衆生の苦を拔くは是順菩提門なり。三には樂淸淨心。一切衆生をして大菩提を得しめんと欲するが故に、衆生を攝取して彼の國土に生ぜしむるが故に。菩提は是畢竟常樂の處なり。若し一切衆生をして畢竟常樂を得しめずば則ち菩提に違する門なり。此の畢竟常樂は何に依てか得る。要ず大義門に依る。大義門といふは、謂く彼の安樂佛國是なり。故に一心專至して彼の國に生ぜんと願ぜしめ、早く無上菩提に會せしめんと欲するなり」と。
[第二大門 二、破異見邪執]
第二に異見邪執を破することを明すとは、中に就て其の九番有り。第一には妄に大乘の無相を計する異見偏執を破す。第二には菩薩愛見の大悲を會通す。第三には心外無法と繋するを破す。第四には穢國に生ぜんことを願じて淨土に往生せんことを願はざるを破す。第五には若し淨土に生ずれば多く喜びて樂に著すといふを破す。第六には淨土に生ぜんことを求むるものは非なり、是小乘なりといふを破す。第七には兜率に生ぜんことを求めて淨土に歸せざるを勸むるを破す。第八には若し十方の淨土に生ぜんことを求むるものは西に歸するに如かずといふことを會通す。第九には別時の意を料簡す。
第一に大乘無相の妄執を破すとは、中に就て二有り。一に總生起。後代の學者をして明かに是非を識りて邪を去り正に向はしめんと欲す。第二に廣く繋情に就て正を顯して之を破す。一に總生起とは、然るに大乘の深藏は名義塵沙なり。是の故に『涅槃經』(北本卷三三・南本卷三一意)に云く。「一名に無量の義あり、一義に無量の名あり」と。要ず須く徧く衆典を審かにして方に部旨を曉むべし。小乘と俗書と文を案じて義を畢るが如きに非ず。何の意か然るべき。但淨土は幽廓にして經論隱顯す。凡情をして種種に圖度せしむることを致す。恐らくは諂語刀刀に渉りて