其の壽一千歳なり。忉利天の壽を以て、一日夜と爲して、此の地獄の壽一千歳なり。殺生・偸盜せる者、此の中に墮す。 復異處有り、等喚受苦處と名く。謂く嶮しき岸の無量由旬なるに擧げ在き、熱炎の黑繩もて束縛し繋ぎ已りて、然して後之を推し、利き鐵刀ある熱地の上に墮す。鐵炎の牙ある狗に噉食せらる。一切の身分、分分に分離す。聲を唱へて吼え喚ばふに、救ふ者有ること無し。昔法を説くに惡見の論に依り、一切不實にして一切を顧みず、岸より投じて自殺せる者、此の中に墮す。復異處有り、畏鷲處と名く。謂く獄卒杖を怒らして急に打ち、晝夜に常に走らしむ。手に火炎の鐵刀を執り、弓を挽き箭を弩へ、後へに隨ひて走り遂ひ、斫り打ちて之を射る。昔物を貪るが故に、人を殺し人を縛り食を奪ひし者、此の中に墮す。『正法念經』略抄
[一、厭離穢土 地獄 衆合]
三に衆合地獄とは、黑繩の下に在り、縱廣前に同じ。多く鐵の山有りて兩山相對せり。牛頭・馬頭等の諸の獄卒、手に器杖を執り、驅りて山の間に入らしむ。是の時に兩の山迫り來りて合せ押すに、身躰摧け碎け、血流れて地に滿つ。或は鐵の山有りて、空より落ち、罪人を打ちて、碎くこと沙揣の如し。或は石の上に置き、巖を以て之を押し、或は鐵の臼に入れ、鐵の杵を以て擣く。極惡の獄鬼、并びに熱鐵の師子・虎・狼等の諸獸、烏・鷲等の鳥、競ひ來りて食噉す。『瑜伽論』『大論』 又鐵炎の嘴ある鷲、其の腹を取り已りて、樹の頭に挂け在き、之を噉食す。彼に大なる河有り、中に鐵の鉤有りて、皆悉く火に燃ゆ。獄卒罪人を執り、彼の河の中に擲げて、鐵の鉤の上に墮す。又彼の河の中に、熱せる赤銅の汁有りて、彼の罪人を漂はす。或は身あり日の初めて出づるが如き者有り、身沈沒すること重き石の如き者有り、手を擧げ天に向ひて號哭する者有り、共に相近づきて號哭する者有り。久しく大苦を受くれども主べ無く救ふもの無し。又復獄卒地獄の人を取りて、刀葉の林に置く。彼の樹の頭を見れば、好端正嚴飾の婦女有り。是の如く見已りて、即ち彼の樹に上るに、