樹の葉刀の如くにして、其の身の肉を割き、次で其の筋を割く。是の如く一切の處を劈き割きて、已に樹に上ることを得已りて彼の婦女を見れば、復地に在り。欲の媚びたる眼を以て、上さまに罪人を看て、是の如きの言を作さく。汝を念ふ因縁もて、我此の處に到れり。汝今何故ぞ我に近づかざる、何ぞ我を抱かざると。罪人見已りて、欲心熾盛にして、次第に復下るに、刀葉上に向ひて、利きこと剃刀の如し。前の如く遍く一切の身分を割き、既に地に到り已れば、彼の婦女は、復樹の頭に在り。罪人見已りて、復樹に上る。是の如く無量百千億歳、自心に誑かされて、彼の地獄の中に、是の如く轉り行き、是の如く燒かるること、邪欲を因と爲す。乃至 獄卒罪人を呵責して、偈を説きて曰く、異人の作れる惡もて異人苦の報を受くるに非ず、自業自得の果なり。衆生皆是の如しと。『正法念經』 人間の二百歳を以て、夜摩天の一日夜と爲して、其の壽二千歳なり。彼の天の壽を以て此の地獄の一日夜と爲して、其の壽二千歳なり。殺生・偸盜・邪婬の者、此の中に墮す。 此の大地獄に復十六の別處有り。謂く一處有り、惡見處と名く。他の兒子を取り、強ひ逼めて邪行し號哭せしめたる者、此に墮して苦を受く。謂く罪人自の兒子を見れば、地獄の中に在り。獄卒、若しは鐵の杖を以て、若しは鐵の錐を以て其の陰中を刺し、若しは鐵の鉤を以て其の陰中に釘つ。既に自の子の是の如きの苦事を見て、愛心悲絶して、堪へ忍ぶべからず。此の愛心の苦は、火燒の苦によりも、十六分の中、其の一にも及ばず。彼の人是の如く心の苦に逼められ已りて、復身の苦を受く。謂く頭面を下に在き、熱せる銅の汁を盛りて、其の糞門に灌ぎ、其の身の内に入れて、其の熟藏、大小腸等を燒く。次第に燒け已れば、下に在りて出づ。具に身心の二苦を受くること、無量百千年の中止まず。又別處有り、多苦惱と名く。謂く男の男に於て邪行を行ぜし者、此に墮して苦を受く。謂く本の男子を見れば、一切の身分、皆悉く熱炎あり。來りて其の身を抱くに、一切の身分、皆悉く解け散る。