往生要集 卷下本

天臺首楞嚴院沙門源信撰
[七、念佛利益]
大文第七に念佛の利益を明さば、大に分ちて七有り。一には滅罪生善、二には冥得護持、三には現身見佛、四には當來の勝利、五には彌陀の別益、六には引例勸信、七には惡趣利益なり。其の文各々多し、今略して要を擧げん 。
[七、念佛利益 滅罪生善]
第一に滅罪生善とは、『觀佛經』の第二に云く。「一時の中に於て分ちて少分と爲し、少分の中に能く須臾の間も佛の白毫を念じて、心をして了了ならしめ、謬亂の想無く、分明正住にして意を注むること息まず、白毫を念ぜん者は、若しは相好を見たてまつり、若しは見たてまつらんを得ざらんも、是の如き等の人は、九十六億那由他恒河沙微塵數劫の生死の罪を除却せん。設ひ復人有りて、但白毫を聞きて心に驚疑せず、歡喜し信受せば、此の人も亦八十億劫の生死の罪を却ぞかん」と。又(觀佛經卷六)云く。「佛世を去りたまひて後、三昧正受して佛行を想はん者も、亦千劫の極重の惡業を除かん」と。佛の行歩の相は上の助念方法の門の如し 又(觀佛經卷六)云く。「佛阿難に告げたまはく。汝今日より如來の語を持して、遍く弟子に告げよ。佛滅度の後に好き形像を造りて、身相をして足らしめ、亦无量の化佛の色像及び通身の色を作り、及び佛跡を畫き、微妙の糸、及び頗梨珠を以て白毫の處に安じ、諸の衆生をして是の相を見ることを得しめよ。但此の相を見て心に歡喜を生ぜば、此の人は百億那由他恒河沙劫の生死の罪を除却せん」と。『優塡王作佛形像經』に云く。「佛の形像を作すは、功德无量にして、世世に生ずる所、惡道に堕さず、後に皆无量寿佛國に生ずることを得て、菩薩と作し、當に成佛を得べし」と云云。略抄