是の故に「如來微妙聲梵響聞十方」と言たまへり。
同地水火風 虚空无分別
此の二句は莊嚴心業功德成就と名く。佛本何が故ぞ此の莊嚴を興したまふと。有る如來を見そなはすに法を説くに此は黑此は白、此は不黑・不白・下法・中法・上法・上上法と云ふ、是の如き等の无量差別品有り、分別有るに似たり。是の故に願じて言たまはく。我成佛せむに、地の荷負するに輕重の殊无きが如く、水の潤長するに莦 惡草 葀 瑞草括音 の異无きが如く、火の成就するに芳臰の別无きが如く、風の起發するに眠悟の差无きが如く、空の苞受するに開塞の念无きが如くならしめん、之を内に得て物を外に安くす。虚しく往きて實ちて歸るに是れ息に於てをや。是の故に「同地水火風虚空无分別」と言たまへり。
天人不動衆 淸淨智海生
此の二句は莊嚴衆功德成就と名く。佛本と何が故ぞ此の莊嚴を起したまふと。有る如來法輪を説きたまふ下に、所有の大衆の諸の根の性欲は種種不同なり、佛の智慧に於て、若しは退ぞき若しは沒す、等しからざるを以ての故に、衆純淨ならざるを見そなはす。所故に願を興したまへり。願は我れ成佛せむに、所有の天人皆如來の智慧淸淨海より生ぜむ。「海」は佛の一切種智深廣にして崖无く、二乘雜善の中下の死尸を宿さざることを言ふ。之を海の如しと喩ふ。是の故に「天人不動衆淸淨智海生」と言たまへり。「不動」は彼の天人大乘根を成就して傾動すべからずと言ふなり。
如須彌山王 勝妙无過者