若し凝心注想せば復何に依てか念の多少を記することを得べきや。答曰。『經』に言たまはく。十念は業事成辨を明かすならくのみと。必ずしも頭數を知ることを須ゐざれどもなり。蟪蛄春秋を識らず、伊蟲豈に朱陽の節を知らむやと言ふが如し。知る者の之を言ふならくのみと。十念の業成ずといふは、是亦神に通ずる者の之を言ふのみと。但念を積み相續して他事を縁ぜざれば便ち罷みぬ。復何ぞ假に念の頭數を知ることを須ゐむなり。若し必ず須く知るべくは亦方便有り。必ず口授すべし。之を筆點に題ことを得ざれと。

無量壽經優婆提舍願生偈註 卷上