頓敎と一乘海とに依て 偈を説きて三寶に歸し 佛心と相應せり 十方恆沙の佛 六通もて我を照知したまへ 今二尊の敎に乘じて 廣く淨土の門を開く 願はくは此の功德を以て 平等に一切に施し 同じく菩提心を發して 安樂國に往生せん

此の『觀經』一部の内に、先づ七門を作りて料簡し、然して後に文に依て義を釋す。第一に先づ序題を標す。第二に次に其の名を釋す。第三に文に依て義を釋し、并びに宗旨の不同、敎の大小を辨ず。第四に正しく説人の差別を顯す。第五に定散二善、通別異有ることを料簡す。第六に經論の相違を和會するに、廣く問答を施して疑情を釋去す。第七に韋提佛の正説を聞きて益を得る分齊を料簡す。
[序題門]
第一に先づ序題を標すとは、竊に以みれば眞如廣大なり、五乘も其の邊を測らず。法性深高なり、十聖も其の際を窮むること莫し。眞如の體量、量性蠢蠢の心を出でず。法性無邊、邊體則ち元來不動なり。無塵の法界凡聖齊しく圓かに、兩垢の如如則ち普く含識を該ねて、恆沙の功德寂用湛然なり。但垢障覆へること深きを以て、淨體顯照するに由無し。故に大悲西化を隱して驚きて火宅の門に入り、甘露を灑ぎて羣萠を潤し、智炬を輝かして則ち重昏を永夜に朗にせしむ。三檀等しく備かむらしめ四攝齊しく收めて、長劫の苦因を開示し、永生の樂果に悟入せしむ。羣迷の性隔、樂欲の不同を謂はず。一實の機無しと雖も、等しく五乘の用有れば、慈雲を三界に布き、法雨を大悲に注がしむることを致す。等しく塵勞を洽すに、普く未聞の益を沾さずといふこと莫し。菩提の種子此に藉りて以て心を抽んで、正覺の芽念念に茲に因て增長す。