轉經行道願往生淨土法事讚卷上

沙門善導集記
[前行分]
四天王を請じ奉る 直に道場の中に入りたまへ 師子王を請じ奉る 師子亦逢ひ難し 身の毛衣を奮迅するに 衆魔退散して去る 頭を廻らして法師を請ず 直に涅槃の城を取らん

 序して曰く。

竊に以みれば、娑婆廣大にして火宅無邊なり。六道に周く居して重昏永夜なり。生盲無目にして慧照未だ明らかならず。引導無方にして倶に死地に摧く。循還來去して逝水長流に等し。託命投神して誰か之能く救はん。斯れ乃ち識含無際にして窮塵の劫更に踰えたり。自爾悠悠として勝縁に遇はんこと之何れの日ぞや。

上海德初際如來より、乃至今時の釋迦諸佛、皆弘誓に乘じて悲智雙行し、含情を捨てずして三輪普く化したまふ。然るに我無明障重くして、佛出に逢はず。設使ひ同生すれども還覆器の如し。神光等しく照らして四生を簡ばず。慈及びて偏無く皆法潤に資す。法水に沈むと雖も、長劫に由頑なり。苦集相因り、毒火時に臨みて還發る。

仰いで惟みれば大悲恩重くして等しく身田を潤し、智慧冥に加して道芽增長す。慈悲方便、視敎宜しきに隨ひ、勸めて彌陀を念ぜしめ淨土に歸せしめたまふ。