道路同じからざれば會ひ見ること期無し、甚だ難し甚だ難し、復相値ふことを得んや。何ぞ衆事を棄て、各々勱めて強健の時、努力して力めて善を爲し、力めて精進せざる、來て度世し、極めて長壽を得べし。殊に肯て道を求めずして、復何をか待たんと欲ひ何をか樂はんと欲ふや。是の如きの世人、善を作せば善を得ることを信ぜず、道を爲せば道を得ることを信ぜず、死して後世に復生ずることを信ぜず、施與して其の福徳を得ることを信ぜず。都て之を信ぜず。亦以て之を然らずと謂へり。言是有ること無し。但是に坐るが故に、且く自ら之を見る。更相に看視して、前後轉た相父の餘せる敎令を承受し、先人・祖父素より善を作さず、本より道を爲さず、身愚に神闇く、心塞がり意閉ぢて、天道を見ず、殊に能く人の生死を見ること有ること無し、趣向する所有れども亦能く知る者莫し。適に善惡の道を見ること有ること無く、復語る者有ること無し。爲に用て善惡を作す、福徳・殃咎・禍罰、各々自ら競ひて之を作爲し、殊に怪むこと有ること無し。生死の道に至りて、轉た相續し顛倒上下して無常の根本なり。皆當に過ぎ去るべし、常に得べからず。敎語開導すれども、道を信ずる者は少し、皆當に生死して休止有ること無かるべし。是の如きの曹の人は、朦冥抵突にして經語を信ぜず、各々意を快くせんと欲して、心計慮せず、愛欲に愚癡にして道徳を解らず、瞋怒に迷惑して、財色を貪猥す。之に坐せられて道を得ず。當に更に勤苦して、極めて惡處に在り、生じて終に止りて休息することを得ざるべし。之を痛むこと甚だ傷むべし。或時は家室・中外・父子・兄弟・夫婦、生死の義に至りて、更相に哭涙し、轉た相思慕す。憂念憤結し、恩愛繞續し、心意痛著して、對ひに相顧思す。晝夜解くる時有ること無し。道徳を敎示すれども心開明ならず、恩愛情欲を離れず、閉塞蒙蒙として交錯覆蔽す。思計して心自ら端正に、世事を決斷して、專精に道を行ふことを得ず。便旋として年を竟るに至り、壽命盡くれども道を得ること能はず。奈何ともすべきこと無し。總猥憒譊して皆愛欲を貪る。是の如きの法、道を解らざる者は多く、道を得る者は少し。世間怱怱として聊も頼むべきもの無し。尊卑・上下・豪貴・貧富・男女・大小、各々自ら怱務し勤苦して、躬身ら各々殺毒を懷き、惡氣窈冥として、惆悵せずといふこと莫し。妄に事を作すが爲に、天地に惡逆して仁心道徳に從はず、非惡には先づ隨ひて之に與して恣に爲す所を聽す。其の壽至らざるに、便ち頓に之を奪ひて下りて惡道に入り、累世に勤苦し、展轉愁毒して、數千萬億歳、出づる期有ること無し。