痛言ふべからず、甚だ憐愍すべし。佛阿逸菩薩等に告げたまはく、諸天・帝王・人民に、我皆若曹に世間の事を語らん、人是を用ての故に坐せられて道を得ず。若曹熟々之を思惟して、惡をば當に縱に捨て之を遠離すべし。其の善なる者に從ひて、當に堅く之を持ちて妄に非を爲すこと勿く、益々諸の善を作すべし。大小・多少の愛欲の榮、皆常に得べからず、猶當に別離すべし、樂しむべき者無し。勱めて佛世の時、其れ佛の經諸深きを信愛すること有りて、道徳を奉行せば、皆是我が小弟なり。其れ甫めて佛の經戒を學ばんと欲する者は、皆是我が弟子なり。其れ身を出で家を去て妻子を捨て財色を絶去せんと欲し、來りて沙門と作り、佛の爲に比丘と作らんと欲する者有らば、皆是我が子孫なり。我が世には甚だ値ふことを得難し。其れ願じて無量淸淨佛の國に生ぜんと欲する者有らば、智慧勇猛にして衆の爲に尊敬せらるることを得べし。心の欲する所に隨ひて經戒を虧負し人の後に在ることを得ること勿れ。儻し疑意有りて經を解らざる者は、復前みて佛に問ひたてまつれ、佛當に若が爲に之を解くべし。阿逸菩薩、長跪叉手して言さく。佛の威神は尊重にして説く所の經は快善なり、我曹佛の經語を聽きて、皆心に之を貫思す。世人實に爾なり、佛の語りたまふ所の如く異有ること無し。今佛我曹を慈哀して、天道を開視し、生路を敎語したまふ、耳目聰明にして長へに度脱することを得ん。更に生るることを得るが若し。我曹佛の經語を聽きて、慈心にして歡喜し踊躍し開解せざる者莫し。我曹及び諸天・帝王・人民・蜎飛・蠕動の類、皆佛恩を蒙りて。憂苦を解脱することを得ざる者無し。佛の諸の敎戒は甚深にして、極無く底無し。佛の智慧の見たまふ所。八方・上下、去・來・現在の事を知りて、無上にして邊幅無し。佛には甚だ値ふことを得難し、經道は甚だ聞くことを得難し。我曹皆佛所に慈心あり、今我曹度脱を得ることは、皆是佛前世に道を求めたまひし時、慊苦して學問精進せしが致す所なり。恩徳普く覆ひて、施行する所の福徳、相祿巍巍として光明徹照し、洞虚無極にして、泥洹に開入し、經典を敎授し、制威もて消化して、八方・上下を愍動すること、無窮無極なり。佛は師法尊と爲り、群聖に絶して、都て能く佛に及ぶ者無し。佛は八方・上下の諸天・帝王・人民の爲に師と作り、其の心の欲願する所に隨ひて、大小皆道を得しむ。今我曹佛と相見ゆることを得、無量淸淨佛の聲を聞くことを得たり。我曹甚だ喜びて、黠慧開明なることを得ざる者莫し。佛阿逸菩薩に告げたまはく。若が言へること是實に當に爾るべし。