寶盇上に在り。一切の火炎は化して玉女と爲る。罪人遙に見て心に歡喜を生じ、我中に往かんと欲ひ、我中に住せんと欲ふ。風刀解くる時、寒急にして聲を失ふ、寧ろ好火を得て車の上に在りて、坐して然も火に自ら爆らしめん。是の念を作し已りて即便ち命終す。揮霍の間に、已に金車に坐して玉女を顧瞻すれば、皆鐵の斧を捉りて其の身を斬り截る。身下に火起る、旋火輪の如し。譬へば壯士の臂を屈伸する頃の如くに直に阿鼻大地獄の中に落つ。上隔より旋火輪の如くして下隔の際に至る、身隔の内に徧す。銅狗大いに吼えて骨を齧み、髓を唼ふ。獄率・羅刹、大鐵叉を捉る。叉頸體に徧する火炎を起さしめて阿鼻城に滿つ。鐵網刀を雨らして毛孔より入る。化閻羅王、大聲もて告敕す。癡人は獄種なり、汝世に在りし時、父母に孝せず邪慢無道なり、汝が今の生處をば阿鼻獄と名く。汝恩を知らず、慙愧有ること無くして、此の苦惱を受く。樂と爲すやいなや。是の語を作し已りて即ち滅して現ぜず。爾の時獄率復罪人を駈りて、下隔より、乃至上隔まで、八万四千の隔中を經歴して、身を
ち而も過ぎて鐵網の際に至る。一日一夜は此の閻浮提の日月歳數六十小劫に當れり。是の如くして壽命一大劫を盡す。五逆の罪人、無慙無愧にして五逆罪を造作するが故に、命終に臨む時、十八の風刀、鐵火車の如くして其の身を解き截き、熱逼するを以ての故に便ち是の言を作す。好色の華淸涼の大樹を得て、下にして遊戲せん、亦樂しからずやと。此の念を作す時、阿鼻地獄の八万四千の諸の惡劒林、化して寶樹と作る。華菓茂盛し、行列して前に在り。大熱火炎化して蓮華と爲りて、彼の樹下に在り。罪人見已りて我が所願は今已に果すことを得たりと。是の語を作す時、暴雨よりも疾くして蓮華の上に坐す。坐し已れば須臾に鐵の
ある諸の蟲、火華より起りて骨を穿ちて髓に入り、心に徹りて腦を穿つ。樹に攀ぢて上れば、一切の劒枝、宍を削り骨を徹す。無量の刀林上に當りて下れば、