往生要集 卷上本 盡第四門半
天台首楞嚴院沙門源信撰
[序]
夫れ往生極樂の敎行は濁世末代の目足なり。道俗貴賎誰か歸せざらん者あらん。但し顯密の敎法は其の文一に非ず、事理の業因は其の行惟れ多し。利智精進の人は未だ難しと爲さず。予が如き頑魯の者豈敢てせんや。是の故に念佛の一門に依て、聊か經論の要文を集む。之を披き之を修するに、覺り易く行じ易し。總じて十門有り、分ちて三卷と爲す。一には穢土厭離、二には欣求淨土、三には極樂の證據、四には正修念佛、五には助念の方法、六には別時念佛、七には念佛の利益、八には念佛の證據、九には往生の諸業、十には問答料簡なり。之を座右に置きて廢忘に備へん。
[一、厭離穢土]
大文第一に厭離穢土とは、夫れ三界は安きこと無し、最も厭離すべし。今其の相を明さば、總て七種有り。一には地獄、二には餓鬼、三には畜生、四には阿修羅、五には人、六には天、七には總結なり。
[一、厭離穢土 地獄]
第一に地獄、亦分ちて八と爲す。一には等活、二には黑繩、三には衆合、四には叫喚、五には大叫喚、六には焦熱、七には大焦熱、八には無間なり。
[一、厭離穢土 地獄 等活]
初に等活地獄とは、此の閻浮提の下、一千由旬に在り。縱廣一万由旬なり。此の中の罪人は、互ひに常に害心を懷けり。