死し已りて復活へる。極めて怖畏を生じ、走り避け去りて嶮しき岸より墮つるに、炎の嘴ある烏、炎の口ある野干有りて、之を噉食す。復別處有り、忍苦處と名く。他の婦女を取れる者、此に墮して苦を受く。謂く獄卒之を樹の頭に懸くるに、頭面を下に在き、足を上に在く。下に火炎を燃して一切の身を燒く。燒け盡きなば復生く。唱へ喚ばはらんとして口を開けば、火口より入りて其の心・肺・生・熟藏等を燒く。餘は經に説くが如し。已上『正法念經』より之を略抄す
[一、厭離穢土 地獄 叫喚]
四に叫喚地獄とは、衆合の下に在り、縱廣前に同じ。獄卒の頭黄なること金の如く、眼の中より火出で、赭色の衣を著たり。手足長大にして疾く走ること風の如し。口より惡聲を出して罪人を射る。罪人惶怖し、頭を叩きて哀を求む。願はくは慈愍を垂れて少しく放し捨かれよと。此の言有りと雖も、彌々瞋怒を增す。『大論』 或は鐵の棒を以て頭を打ちて、熱鐵の地より走らしめ、或は熱熬に置き、反覆して之を炙り、或は熱せる鑊に擲げて、之を煎じ煮る。或は驅りて猛炎の鐵の室に入らしめ、或は鉗を以て口を開きて洋銅を灌ぎ、五藏を燒爛して、下より直に出す。『瑜伽論』『大論』 罪人偈を説き、閻羅人を傷み恨みて言く。汝何ぞ悲心無き、復何ぞ寂靜ならざる。我は是悲心の器なり、我に於て何ぞ悲み無きやと。時に閻羅人、罪人に答へて曰く。己に愛羂に誑か爲れて惡不善の業を作り、今惡業の報を受く、何が故ぞ我を瞋り恨むと。又云く。汝本惡業を作り、欲癡の爲に誑からる、彼の時何ぞ悔いざる、今に悔ゆとも何の及ぶ所ぞと。『正法念經』 人間の四百歳を以て、覩卒天の一日夜と爲して、其の壽覩卒の壽を以て、此の地獄の一日夜として、壽四千歳なり。殺・盜・婬・飮酒の者、此の中に墮す。 復十六の別處有り。其の中に一處有り、火末虫と名く。昔酒を賣るに水を加へ益せる者、此の中に墮して、四百四病を具す。風黄冷雜、各々百一の病有り。合して四百四有り 其の一の病の力は、一日夜に於て、能く四大洲の若干の人をして皆死せしむ。