又自らの身より虫出で、其の皮・肉・骨・髓を破りて飮み食ふ。復別處有り、雲火霧と名く。昔酒を以て人に與へ醉はしめ已りて、調戲して之を弄び、彼をして羞耻せしめし者、此に墮して苦を受く。謂く獄火の滿つること厚さ二百肘なり。獄卒罪人を投へて、火の中を行かしむるに、足より頭に至るまで一切洋け消え、之を擧ぐれば還生く。是の如く無量百千歳苦を與ふること止まず。餘は經文の如し。又獄卒罪人を呵嘖し、偈を説きて云く。佛の所に於て癡を生じ、世・出世の事を壞り、解脱を燒くこと火の如くなるもの、所謂酒の一法なりと。『正法念經』
[一、厭離穢土 地獄 大叫喚]
五に大叫喚地獄とは、叫喚の下に在り、縱廣前に同じく、苦相も亦同じ。但し前の四の地獄、及び諸の十六の別處の一切の諸苦、十倍して重く受く。人間の八百歳を以て、化樂天の一日夜と爲して其の壽八千歳なり。彼の天の壽を以て、此の獄の一日夜と爲して、其の壽八千歳なり。殺・盜・婬・飮酒・妄語の者、此の中に墮す。獄卒罪人を呵嘖し、偈を説きて云く。妄語は第一の火なり、尚能く大海を燒く。況や妄語の人を燒くことは、草木の薪を燒くが如しと。  復十六の別處有り。其の中の一處を受鋒苦と名く。熱鐵の利き針もて、口舌倶に刺され、啼哭すること能はず。復別處有り、受無邊苦と名く。獄卒熱鐵の鉗を以て其の舌を拔き出す。拔き已れば復生じ、生ずれば則ち復拔く。二眼を拔くこと亦然なり。復刀を以て其の身を削る。刀甚だ薄くして利きこと、剃頭刀の如し。是の如き等の異類の諸の苦を受くること、皆是妄語の果報なり。餘は經に説くが如し。『正法念經』略抄
[一、厭離穢土 地獄 焦熱]
六に焦熱地獄とは、大叫喚の下に在り、縱廣前に同じ。獄卒罪人を投へて、熱鐵の地の上に臥せ、或は仰むけ或は覆せ、頭より足に至るまで、大なる熱鐵の棒を以て、或は打ち或は築きて、肉摶の如くならしむ。或は極熱の大なる鐵熬の上に置き、猛炎もて之を炙り、左右に之を轉じて、