之を噉食す。此の刃葉の林より間無くして、鐵設し柆末梨の林有り。彼の諸の有情、舍宅を求めんが爲に、便ち之に來り趣きて、遂に其の上に登る。登る時に當りて、一切の刺鋒悉く廻りて下に向き、下らんと欲する時には、一切の刺鋒、復廻りて上に向く。此の因縁に由て、其の身を貫き刺すこと、諸の支節に遍し。爾の時に便ち鐵の觜ある大烏有りて、彼の頭上に上り、或は其の髆に上り、眼精を探り啄みて、之を噉食す。鐵設柆末梨の林より間無くして、廣大なる河有り、沸熱せる灰の水、其の中に彌滿せり。彼の諸の有情、舍宅を尋ね求めて、彼より出で已り、來りて此の中に墮つるに、猶し豆を以て之を大いなる鑊に置き、猛熾なる火を燃きて之を煎り煮るが如し。湯の騰り湧くに隨ひて周旋廻復す。河の兩岸に於て、諸の獄卒有り、手に杖索及以び大網を執りて、行列して住り、彼の有情を遮りて、出づることを得しめず。或は索を以て羂け、或は網を以て漉ふ。復廣大なる熱鐵の地の上に置き、彼の有情を仰けて、之に問ひて言く、汝等今は、何の所須をか欲するやと。是の如く答へて言ふ。我等今は、竟に覺知すること無し。然れども種種の飢苦の爲に逼めらると。時に彼の獄卒、即ち鐵の鈷を以て口を鈷みて開かしめ、便ち極熱燒燃の鐵丸を以て、其の口中に置く。餘は前に説けるが如し。若し彼答へて我今唯渇苦の爲に逼めらると言はば、爾の時に獄卒、便即ち洋銅を以て其の口に灌ぐ。是の因縁に由て、長時に苦を受く。乃至先世に造る所の一切の惡業、能く那落迦を感ず。惡不善の業盡き未れば、未だ此の中を出でず。若しは刀劒刃路、若しは刃葉の林、若しは鐵設柆末梨の林、之を總て一と爲す、故に四の園有るなり」と。已上、『瑜伽』并びに『倶舍』の意一一の地獄の四門の外、各々四園有り。合して十六と爲す。『正法念經』八大地獄の十六別處の名、相各別同ぜず 復頞部陀等の八寒地獄有り、具に經論の如し。之を述ぶるに遑あらず。
[一、厭離穢土 餓鬼]
第二に餓鬼道を明かさば、住處に二有り。一は地の下五百由旬に在り、閻魔王界なり。二は人天の間に在り。