數十餘部の經論の文は、慇懃に指授して西方に生れんことを勸めたり。是を以て偏に念ずるなり」。已上 大師一切の經論を披閲したまへること、凡そ十五遍なり。應に知るべし、述ぶる所信ぜずばあるべからず。迦才師の三卷の『淨土論』には、十二經・七論を引けり。一には『無量壽經』、二には『觀經』、三には『小阿彌陀經』、四には『鼓音聲經』、五には『稱揚諸佛功德經』、六には『發覺淨心經』、七には『大集經』、八には『十往生經』、九には『藥師經』、十には『般舟三昧經』、十一には『大阿彌陀經』、十二には『無量淸淨平等覺經』なり。已上。『雙卷無量壽經』『淸淨覺經』『大阿彌陀經』は同本異譯なり 一には『往生論』、二には『起信論』、三には『十住毘婆沙論』、四には一切經中の『彌陀偈』、五には『寶性論』、六には龍樹の『十二禮偈』、七には『攝大乘論』の彌陀偈なり。已上。智憬師之に同じ 私に加へて云く。『法華經』の藥王品・『四十華嚴經』の普賢願・『目連所問經』・『三千佛名經』・『無字寶篋經』・『千手陀羅尼經』・『十一面經』・『不空羂索』・『如意輪』・『隨求』・『尊勝』・『無垢淨光』・『光明』・『阿彌陀』等の諸の顯密の敎の中に、專ら極樂を勸むること稱げて計ふべからず。故に偏に願求するなり。 問。佛言はく。諸佛の淨土は實に差別無しと。何が故ぞ如來は偏に西方を讃じたまふや。答。『隨願往生經』(灌頂經卷一一)に佛此の疑を決して言はく。「娑婆世界は人貪濁多くして、信向する者少く、邪を習ふ者多くして正法を信ぜず、專一なること能はざれば、心亂れて志無し。實には差別無しといへども、諸の衆生をして專心に在ること有らしめんとす。是の故に彼の國土を讃嘆するのみ。諸の往生人、悉く彼の願に隨ひて果を獲ずといふこと無し」と。又『心地觀經』(卷七)に云く。「諸の佛子等、當に心を至して一佛及び一菩薩を見たてまつらんことを求むべし。是の如きを名けて出世の法要と爲す」と云云。 是の故に專ら一佛國を求むるなり。 問。其の心を專にせんが爲ならば、