往生要集 卷中本
天台首楞嚴院沙門源信撰
[四、正修念佛 觀察門]
第四に觀察門とは、初心の觀行は深奧に堪へず。『十住毘婆娑』
(卷一二意)に云ふが如し。「新發意の菩薩は先づ佛の色相を念ぜよ」と。又諸經の中に、初心の人の爲には多く相好の功德を説けり。是の故に今當に色相觀を修すべし。此を分ちて三と爲す。一には別相觀、二には總相觀、三には雜略觀なり。意樂に隨ひて應に之を用ふべし。
[四、正修念佛 觀察門 別相觀]
初に別相觀とは亦二有り。 先づ華座を觀ず。『觀經』に云く。「彼の佛を觀んと欲はん者は、當に想念を起すべし。七寶の地の上に於て、蓮華の想を作し、其の蓮華の一一の葉をして百寶の色を作さしめよ。八万四千の脈有り、猶し天の畫の如し。脈に八万四千の光有りて、了了分明に皆見ることを得しめよ。華葉の小さき者は、縱廣二百五十由旬なり。是の如きの華に八万四千の葉有り、一一の葉の間に百億の摩尼珠王有り、以て映飾と爲す。一一の摩尼珠、千の光明を放つ。其の光蓋の如し、七寶合成して、遍く地の上に布ふ。釋迦毘楞伽寶以て其の臺と爲す。此の蓮華臺は八万の金剛・甄叔迦寶・梵摩尼寶・妙眞珠網以て交飾と爲る。其の臺の上に於て、自然にして四柱の寶幢有り。一一の寶幢百千萬億の須彌山の如し。幢の上の寶縵、夜摩天宮の如し、五百億の微妙の寶珠有り、以て映飾を爲す。一一の寶珠に八万四千の光有り。