我等佛の一切の聲聞の弟子に於て、乃至若しは復禁戒を持たざらんも、鬢髮を剃除し袈娑の片を着けたらん者をば、師長の想を作して、護持し養育し、諸の所須を與へて乏少すること无からしめん。若し餘の天・龍乃至迦吒富單那等、其の惱亂を作し、乃至惡心にして眼を以て之を視ば、我等悉く共に彼の天・龍・富單那等の、所有の諸の相をして缺減し醜陋ならしん。彼をして復我等と共に住し共に食することを得ざらしめん、亦復同處して戲咲することを得ず。是の如くに擯罰せん」と。已上取意。 又(大集經卷五六)云く。「爾の時に世尊、上首彌勒、及び賢劫の中の一切の菩薩摩訶薩に告げて言はく。諸の善男子、我昔菩薩の道を行ぜし時、曾て過去の諸佛如來に於て、是の供養を作しき。此の善根を以て、我が與に三菩提の因と作せり。我今諸の衆生を憐愍するが故に、此の果報を以て分ちて三分と作し、一分は留めては自ら受け、第二の分をば我が滅後に於て、禪解脱三昧と堅固に相應する聲聞に與へて、乏くる所无からしめ、第三の分をば、彼の破戒にして經典を讀誦し、聲聞に相應して正法・像法に、頭を剃り袈娑を着せん者に與へて、乏くる所无からしん。彌勒我今復三業相應の諸の聲聞衆・比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷を以て、汝が手に寄付す。乏少孤獨にして終らしむること勿れ。及び正法・像法に、禁戒を毀破して、袈娑を着せん者を以て、汝が手に寄付す。彼等をして諸の資具に於て乏少にして終らしむること勿れ。亦旃陀羅王の、共に相惱害して身心に苦を受くること有らしむること勿れ。我今復彼の施主を以て汝が手に寄付す」と。已上 破戒すら尚爾なり、何に況や持戒をや。聲聞すら尚爾なり、況や大心を發して誠に佛を念ぜんをや。 問。若し破戒の人も、亦天・龍の爲に護念せられなば、云何ぞ『梵網經』(卷下意)には「五千の鬼神、破戒の比丘の跡を拂ふ」と云ひ、『涅槃經』(北本卷三・南本卷三意)には「國王・群臣及び持戒の比丘は、當に破戒の者を苦治し駈遣し呵嘖すべし」と云へるや。